2023年9月17日日曜日

九月を詠む。

[ 地球温暖化してくと、小さい秋が引き延ばされてお得 ]

 一時、地球温暖化の影響で「やがては日本の美しい四季がなくなる」などという妄言が繰り広げられていたことがあったけど、別にそうでもなくね。

 暑いは暑いなりに、結構順調に気温は下がっていくことを確認できたりするし、むしろ秋雨前線なんかは強力になって、夏と秋の境目を強烈にアピールしていく方向性な気がする。

 私が子供の頃なんかは、秋雨前線とかそんなに意識したことなかったし、段階を踏まずに突然「秋になった」と感じることも多々あって、そんなときには、小さい秋なんか見つけることもなく、「変わりましたので」と一方的に告げられるようにして、「秋」がやってきていた。(鈍感なだけだったろうけど)

 長くなっていく残暑に辟易するというのは、確かにそうであるにしろ、その長い残暑は、小さな秋の遷ろいを見つける猶予の時であり、本格的な秋の訪れを前にした「足踏み」の時間であると考えれば、そのことにもまた、情緒は生まれていくような気がする。

 地球温暖化というのも、捉え方によっては悪いことばかりではないんじゃないだろうか。

 とくに私のような鈍感この上ないばかりか、目も頭もそれほど良くないような人間には、季節の方が足踏みをして待ってくれるというのなら、それはそれで、ありがたいことなのだ。


[ 短歌・九月 ]

 題は、それぞれお題として頂戴したもの。

・秋空  武蔵野やよすがの富士にうち寄せる果ても尽きぬか雲のうらなみ

・秋雲  伸ばす手のおよびもつかぬ秋の雲わけてもちぎれ風のはしりに

・秋風  よしあしを問うても萩のもだもやに撫ぜ秋風の過ぐにうなずく

     わくらばのひとり臥所にねる歌のしぼるえりにも秋風ぞ吹く

・落葉  日めくりにはなす掌ひらひらと落ちてささやく秋の呼び声

・お庭  そよと吹く風にむつみし陽だまりのこぼれてさらう君のてのひら

・色鉛筆 色取らぬ色鉛筆の白の丈見ては伸ばせよ誇りの背筋

・鰹節  ひきらかなまくらの片なに置きし忠節は曲げぬと直ぐかつおぶし

・白河関 これよりの道の苦楽は白河の関を渡るる雲の浮橋


[ 短歌・特殊 ]

・日照り  潤まずと乾くも知らで小濡れ路のほとけのふかき慈悲をさぐれば


[ 長歌? ]

 なんかたまにこういうのいいよねっていう。

: 佐藤嗣信・忠信 :

 白河の荒れたる沖のみおつくし 九郎の元に馳せたるは

 不忍と打ち出でにけり梓弓 ひくは諸手の信夫駒

 信を継ては継信の 忠をみたりて忠信の 合わせ立てたる瑠璃の功

 咎めてかかる袖に燃え 払う飛沫の赤縅

 玉の刃に薙ぎてと散るは 清入道の兵家ども

 藤の奥州背に乗せて 義にも経ふること幾年と 

 かばう瀬戸海の屋島浜 京堀川に護りて果つる 

 飛ぶやと折れぬ二つ矢も 露と落ちたる忍草

 悲暮れ椿におとはなく 散るは早しの若櫻 楓の色もまだ乗らむとて

 帰るは主ともならば 生うる心の信夫地に 消えぬ佐藤の名にはなくとも