和歌・短歌

 自作の和歌置き場。

 ここに移るまでに、ちょいちょい変わってるかも。

 ちょいちょい改稿してます。

 してます。


[ モンゴル人力士霧馬山の活躍を知りて詠む歌 ]

 2023年5月初旬。モンゴル人力士霧馬山の活躍を報せるニュースを見て詠む。

 霧馬山はモンゴルの遊牧部落出身のモンゴル人力士。

 時津風一門の陸奥部屋に所属し、陸奥親方の弟子として大相撲力士となる。

 この後、見事大関昇進し、四股名を『霧島』と改める。


・霧馬山 蒙古里モンゴルを振りさけみれば白露の包みも遠く立つ霧馬山

・穹廬  蒙古里野もくりのをおおいてさや天穹廬てんきゅうろ霧馬の山路まだ崎嶇けわしくも

・相撲  蒼野消ゆ角土俵かくつちだわら勝ち昇り綱つかむとかますらおの手は 

・横綱取 うち霧らす野に青駒の駆けゆきて山の先には早や双葉生らむ

 

 ※青駒……白馬(あおうま)

 ※蒙古里……隋代くらいの蒙古部族の支配地の呼び名。日本語では「もくり」と読む。

 ※穹廬……テント。


[ 庭に生る花水木が、米国原産と知りて詠む歌 ]

 花水木は、アメリカ原産。

 日本から桜を送った時に、返礼の記念樹として日本に植樹される。

: 花水木 :

ぬばたまの夜に靡きし山法師やまぼうし咲く白花の枝にも繁しく

・繁る枝に木漏りて落ちぬ月灯り受けてし清明さやかつぶ砂の星

・星の砂ほお吹き返す風に揺れ潤みしには散りてまばゆし

・まばゆしと繁しく思ふ君が花瑞木に結びぬ吾が恋心 


 ※山法師……ヤマボウシ。ミズキ科の木。花水木にそっくりというか、花水木がヤマボウシそっくりなので、花水木にはアメリカヤマボウシという和名がある。


[ 藤井聡太竜王VS渡辺名人の世紀の一戦を見ながら詠む歌 ]

 2023年5月30日と6月1日。長野県高山村にある緑霞宿藤井荘にて、将棋の渡辺明名人に藤井聡太六冠が挑む第八十一期名人戦シリーズ第五局が開催さる。

 挑戦者藤井聡太六冠が、魔太郎こと渡辺明に挑む当局は、二日間にわたって行われ、激戦の末、藤井聡太六冠が勝利。通算成績を4勝1敗とし、最年少で名人位を奪取した。

 これによって藤井聡太は最年少での七冠棋士となり、渡辺明は棋士生涯で初めて「九段」となった。


: 長歌 :

 小波ささなみの 寄るやもがもな 白雲の 立つ高山に

 緑の霞む小畑おばたけの 玉櫛笥たまくしげ  実生みおふる信濃の 玉造たまつくり

 もののふの 八十娘子ら 籠持ちて 実をば集めて 信濃道を 踏みしめ生らむ

 濃い紅の 一圷ひとつきの酒


:将棋:

・信濃路  垂れ咲きぬみ藤が花にもがもやとふる信濃道に五月雨の露

・詰将棋  信州に流るを積水つみぬ松川の深みも増ししいよますますに

・将棋盤  もののふの八十の打ち手が仰ぎ見し一に座しは明らかなりや

・藤井   天伝う藤井の荘に入り日差し駒かづき見ゆ高山の月


※玉櫛笥……宝石などを入れておく丸形をした蓋つきの椀。「み」にかかる枕詞。

※玉造……玉造石。本義としては勾玉の原石のことを指す。この場合は、葡萄。

※もののふの……「八十」にかかる枕詞。

※天伝う……「入り日」にかかる枕詞。

※入り日……落日。

※被く……被る。


[ 2023年六月 梅雨と七夕に詠む歌 ]


: 短歌 :

・武蔵野  遥か富士秩父の峰をひきおりてつらしまほしと見放みさく武蔵野

・梅雨空  白妙の袖しめらすか鉛雲露けき空に圧して居座る

・雨    武蔵野は飲みつくせぬと鳴き渡り野面のもせに降りぬ水取みずとりの雨


: 旋頭歌 七夕 :

 天の川こぼれて雨濯うたくいよさ水垂みだれの 滴したたりて風葉を鳴らせこの夕べにも

: 七夕 :

・天雲のはるかたゆたう天の原晴ると願えや川のはるかに

・うちなびく草に埋もれし朝顔の花見ゆるたび我が背思おゆ

・朝顔の蔓の絡みし我が恋にはだへも染まる花の紅紫に

・相見して愛しと絡み触れし君およびを染し花の青しに

夕星ゆうづつのかぎるを待ちぬぬばたまのに雲されば月隠り消ぬ

・逢わめしと小石をうずむ天の川君見つらんと待つこのはたに



※武蔵野……埼玉県中央部から東京、神奈川北東部まで含む台地。埼玉北部は埼玉(さきたま)埼玉南部は大家が原ともいう。一番大きな酒杯を指す名称でもある。武蔵野=広い=野見尽くせぬ=飲みつくせぬという駄洒落。

※朝顔……別名を牽牛花。


[ 2023年七月 ]

 熱いむさしのが始まってまいりましたという頃。

 加えて、三歳の頃の千葉旅行を(家族が)思い出して。

: 短歌 武蔵野・夏 :

・大家原  はるけきと大家が原に立つ雲の峰に分け入り翔ぶ夏燕

・南風   島影の雲のまにまに波をかく南に吹かれて鈴のねに入る

・アスファルト 黒帯の長道うねりて明日晴あすはるとかぎる夕暮れまた焦がすべし 

・徳栄   あくがるる西より流る雲の疾くはるかに尽きぬ風の青さよ


: 短歌 羇旅・安房 :

・二夕間川  ささらゆく淡の水面は清澄きよすみの山辺もゆかし夏二夕間川ふたまがわ

・安房行  館山の浦行き蹴らしと立つ波につひにあわでの富士の白峰

・不憶   息長鳥しながどり安房の磯道の館山を行けるかもとはさは鳴けぬかも


※息長鳥……安房にかかる枕詞。

※清澄……清澄山。相模で敗れた源頼朝が、再起を祈願したお寺がある。

※二夕間川……清澄山から流れる川。


[ 2023年 八月 ]

 大家が原を一望する好立地だったのになぁという八月。

 ただ、大空に雲が流れていくところはまだまだ見える。


: 旋頭歌 小埼沼 :

・雲入道まだあきたらぬと天に立たりし 小埼沼垂水のあめにかすみしいわ


: 短歌 :

・夕暮  落ち葉月なれの夕日に色取りてわぶとも霞むほのあかね雲

・電線  五緒の雲間なで弾き盛る月にさやきを鳴らし秋をまつ虫


: 折句 熱帯夜 :

・ ねもころに月の浮き夜を手繰り寄せいろになずさふ八重の黒髪

・ つき夜ふり立ち待つ我にいづるかげやみのうつつはねぶか我より

・ くるとも幾日いくかで果つるやつの葉に寝臥してでも宣えつつがなしやと

・ いとまなく宿りの蒸して寝みあぐる月三更に垂る忍草

・ 屋根樋ひのねに添い伝いてつかま蔓高き月へといざのぼらんと


[ 2023年 九月 ]


: 短歌 :

 題は、それぞれお題として頂戴したもの。

・秋空  武蔵野やよすがの富士にうち寄せる果ても尽きぬか雲のうらなみ

・秋雲  伸ばす手のおよびもつかぬ秋の雲わけてもちぎれ風のはしりに

・秋風  よしあしを問うても萩のもだもやに撫ぜ秋風の過ぐにうなずく

     わくらばのひとり臥所にねる歌のしぼるえりにも秋風ぞ吹く

・落葉  日めくりにはなす掌ひらひらと落ちてささやく秋の呼び声

・お庭  そよと吹く風にむつみし陽だまりのこぼれてさらう君のてのひら

・色鉛筆 色取らぬ色鉛筆の白の丈見ては伸ばせよ誇りの背筋

・鰹節  ひきらかなまくらの片なに置きし忠節は曲げぬと直ぐかつおぶし

・白河関 これよりの道の苦楽は白河の関を渡るる雲の浮橋

・名月  秋の戸に居残る夏の影さすもあの月みればこの月の月

・無月  行き暮れてたむるる雲の居惑うにやすむもよいか無月のそらに

・望月  雲さればあめにすむよと宵もふる心に冴える秋の望月


: 短歌・特殊 :

・日照り  潤まずと乾くも知らで小濡れ路のほとけのふかき慈悲をさぐれば


[ 二次創作 ]

 二次創作和歌。

: 戦国小町苦労譚 本多平八郎忠勝 :

・桜花空を高みて咲き染めし思ひ静かに春風ぞ吹く

・尾張へとしづく心の桜花我が手に残せこの香だにも

・ことならば君がためにと咲きしみのはつせの山に桜ちるらん 

・手もふれで寄するばかりの白波のおもひ鳴海や音は静なり

・鍋を焚く薪とくべたる梓弓おす甲斐もなく小火もつくまじ

木綿ゆうだすきなければ恋ひもかけられぬめぐる思ひは空糸車