2023年6月2日金曜日

多分この記録は破られねぇだろ。

 将棋。

 久しぶりの名人位交代劇は、文字通り歴史的な戦いとなりましたねぇ。
 アベマの中継見てましたけど、名実ともに将棋の名人であるはずの渡辺明(いまはもう九段……)が、勝負を焦って勝ち筋を読み間違うという、ちょっとびっくりの一戦でしたか。
 正直、『高野山の頓死』以来の、大チョンボをやらかしたと言ってもいいのでは……。
 藤井聡太竜王名人七冠(スゲェ)側としては、納得のいかない負けを食らった将棋(名人戦シリーズ第三戦)のリターンマッチとばかりに櫓を組んで戦いをはじめたものの、やっぱり敗勢色濃くなってダメだったか……ってなったあとに、名人側から繰り出された緩手に驚いて一時間も長考しましたからねぇ。
 正直、藤井竜王名人七冠(スゲェ)側は、叡王戦の千日手二回の激戦の疲れが取れていない可能性あった。いつもより明晰さを欠いた闘いだったようにも思えましたし。(終盤の詰路かかった瞬間、AIを上回ったのには笑ったけど)
 昨日の一戦は、のちに世紀の凡戦と綽名されてもしょうがない戦いではありました。

 それでも、名人位獲得の意義は揺るがない。
 将棋のタイトルの中でも、名人位は、竜王位と並んで特別な位とされていますが、その竜王位と比べてもさらに、価値の高い、将棋界においても「至尊の冠」というべき称号。
 なにせほかのタイトルが、勝てば勝つだけ取れるというもの(そう単純なもんじゃないけど)であるのとは別にして、この名人戦というものは、順位戦というリーグを勝ち抜いて昇級しなければ、挑戦することも敵わない厳しい戦いの果てにたどり着く場所なのです。
 名人戦という至高の戦いに至るには、順位戦というクラス分けされたリーグ戦を勝ち抜いて昇級する必要があるのですが、これらはC2-C1-B2-B1-Aと分けられていて、そこでさらにAクラス優勝(A級1位)をする必要があり、タイトル挑戦資格を獲得するだけでも、最速で5年の月日がかかるのです。
 ちなみに、B1クラスからは定員が13名となり、定員が10名のAクラスと合わせて23の席しか用意されておらず、いかにも雑魚そうな名前のB1組に上がった時点で、将棋の棋士としては現役のトッププロ、将棋界当代たちのさらに上澄み、鬼の打ち手の集まりです。
 藤井竜王名人七冠(スゲェ)は、中学生での四段昇格から、ほぼ足踏みなしでこの順位戦を勝ち抜いて、見事、最年少名人位獲得となったわけですが、また一方で、これまでの中学生四段全員が名人となってきたという過去の歴史も受け継いで、その仲間入りを果たしたわけで、名実ともにレジェンド棋士の一人となったと言えるでしょう。
 
 将棋界では、もうほとんどやることはなくなったと言える藤井竜王名人七冠(スゲェ)ですが、残さている偉業といえば、あとは新時代の全冠制覇(八冠)と、タイトル通算100期獲得くらいでしょうか。前者は今年の内にやれる可能性がまだ残されていて、後者は先にできそうな人(羽生さん)の頭を上からバシバシ叩ける位置にいて、その羽生さん自身はこの2年で取れなければさすがにもう無理という感じ。そうであれば、藤井竜王名人七冠(スゲェ)自身の実力の衰えを考慮してさえ、15年後くらいには達成できそうなので、ぜひ頑張ってほしいですね。


 藤井聡太六冠と渡辺明名人の信州高山で行われたタイトル戦をみながらに詠んだ歌。

 長歌

・ 小波ささなみの寄るやもがもな 白雲の立つ高山に

  寄せてはかえす緑野の 小畑の葡萄を摘みにしは

  もののふの 八十娘子おとめらの こも持ちて

  実をば集めて信濃道しなのじを 踏みしめ生らむ 

  濃紅の一圷ひとつきの酒


 短歌

垂れ咲きぬ み藤が花に もがもやと ふる信濃道に 五月雨の露 

・信州に ながる積水つみぬ 松川の 深みも増しし いよますますに 

・駒を指し 攻めし受けしの 合いの手に 名こそ求めよ いつかしが岡          

・もののふの 八十やその打ち手が 仰ぎ見し 一にまししは 明らかなりや

茜さす 藤井の荘に 夕されば 駒かづき見ゆ 高山の月




※増ししの使い方があってるのか自信がない。
※いつかし……神聖なる樫の木。上代の「かし」は「櫟(いちい)」も含む。高級将棋盤に使われる『榧』は、櫟の系統。けど、婉曲に過ぎる表現かぁ。

 こういう時に出るよねぇ。相談相手のいないことが。